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睡眠時無呼吸の治療
治療の目的
睡眠時無呼吸症候群の治療の目的は、日中の眠気などの自覚症状を改善することと、生命予後を延長することです。
治療が必要な条件
治療が必要かどうかは、AHIの数値によります。AHIとは、「1時間あたりの無呼吸の回数+低呼吸の回数」のことで、PSG検査など医療機関で検査を行った場合に計算が可能です。
軽症(5≦AHI<30)の場合は、日中の眠気などの明らかな自覚症状がある場合や、自覚症状が軽微でも、高血圧や心血管系の持病がある場合には治療が必要です。ところが、軽症で自覚症状も高血圧などの心血管系の持病がなく、単純ないびきだけの場合は治療の有効性は乏しいです。
いろんな治療法
1.経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP:”シーパップ”)
閉塞型睡眠時無呼吸症候群の治療として現在、世界中で最も普及していてるのがCPAPであり、その有効性・安全性は確立済みです。
海外でのCPAPを用いた治療を長期に行った結果では、一般人と睡眠時無呼吸患者において9年生存率に差がなく、患者の予後を改善すると報告されています。
したがって、日本では簡易検査でAHI≧40、あるいは精密検査でAHI≧20の重症例では、健康保険が適応となり、CPAPが治療の第1選択となります。
CPAPのメリット
- きちんと設定されれば、ほぼ完全に気道閉塞を予防し無呼吸を防止できる。
- 日中の眠気の改善や熟睡感など効果を自覚しやすい。
CPAPのデメリット
- あくまで対症療法であり、患者は原因が改善されない限り半永久的に治療が必要
- 毎晩、就寝時に機器を装着しなければならない。
2.手術
手術的治療法としては、「口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(=UPPP)」という上気道を拡大する手術があります。この手術を行うことにより閉塞型の無呼吸を減らすことはできますが、完全になくすのは難しいようです。
重症例では、CPAPに比べて有効性が低いとされていますが、軽症~中等症の例で、CPAPなど継続した治療を希望されない患者には有用な治療法です。
他には、小顎症や下顎後退症の方には顔面形態矯正術が有効なことがあります。また、鼻ポリープなどによる鼻閉も睡眠時無呼吸症候を悪化させる原因となるため、この治療も有用である場合がああります。
3.口腔内装置
口腔内装置(マウスピースなど)も閉塞型睡眠時無呼吸症候群の治療としての有効性が確立されていますが、CPAPと比べるとその効果は劣ります。このため原則的には、治療の第2選択となります。
しかしながら、CPAPに比べると安価で、一度作成さえすれば、しばらく使用できるためCPAPよりは続けやすい、という一面があります。このため、軽症~中等症の例でCPAPの継続治療が難しい場合はよい適応となります。
3.減量
肥満は、閉塞型睡眠時無呼吸症候群の最も重要な原因であり、多くの患者は肥満を伴っています。
したがって、肥満患者の閉塞型睡眠時無呼吸症候群に対して、減量は優先的に考えなければならない治療法といえます。
重症の閉塞型睡眠時無呼吸症候群の患者に対して、減量だけで無呼吸を完全に消失させることはきわめて難しいと言われていますが、最近の研究では、10%の減量を行うことによりAHIを26%低下させる、という結果も出ています。