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痛風の診断と3つのタイプ
痛風の診断方法は?
もっとも確実な痛風の診断方法は、痛風の発作中の関節の中に尿酸の結晶があることを証明することです。これで診断は確定します。ただしこの検査方法では、痛みのある関節に針を刺して行うため患者さんにとっては侵襲が大きいことなどの理由によりあまり広くは行われていません。痛風の症状は特徴的なので、専門知識を持った医師であれば症状や通常の検査結果で十分に診断が可能です。主に使用されるのは、下記の米国リウマチ学会の診断基準です。
2.痛風結節の証明
3.以下の項目のうち6項目以上を満たすこと
- 2回以上の急性関節炎の既往がある
- 24時間以内に炎症がピークに達する
- 単関節炎である
- 関節の発赤がある
- 第一MTP関節*の疼痛または腫脹がある
- 片側の第一MTP関節*の病変である
- 痛風結節がある
- 血清尿酸値の上昇がある
- X線上の非対称性腫脹がある
- 発作の完全な寛解がある
*MTP関節:足や指の付け根にある関節のこと
血液検査
血液検査で直接尿酸値を調べます。ただし、痛風発作中は必ずしも尿酸値は上がりません。むしろ普段よりも下がっていることもありますので、尿酸値が低いからといって痛風の診断を否定する理由にはなりません。また、痛風(高尿酸血症)のある方は高血圧や脂質異常症、脂肪肝などの生活習慣病を合併している可能性が高いため、肝機能やコレステロール、血糖値なども一緒に調べます。
超音波検査(エコー検査)
当院では、血液検査や尿検査に加え、より確実な診断のために超音波検査(エコー検査)を併用しております。
痛風発作が起きている関節を超音波で見ることにより、関節内の尿酸血症の量を確認したり、炎症の程度を把握することができ痛風と診断する大事な所見が得られます。これらは、レントゲン検査では決して分からない所見です。
超音波検査は骨の表面の膜の様子まで詳しく見ることができ、痛みや被爆を伴わないため非常に優れた検査といえるでしょう。
また、腎臓などを観察することにより痛風の合併症である、腎結石や尿管結石を発見することも可能です。
尿酸クリアランス検査
尿酸クリアランスとは、尿に出ている尿酸の量を測る検査で計算のため、尿検査と同時に血液検査が必要となります。この検査結果により、痛風(あるいは高尿酸血症)が3タイプに分けられます。
痛風の3タイプ
痛風は、尿酸クリアランスの数値によって下記の3タイプ(正常を入れると4タイプ)に分けられます。
タイプ毎に治療法が変わる(使用する薬が変わる)ため、どのタイプなのかは必ず調べる必要があります。
- 産生過剰型
新陳代謝・エネルギー代謝が上がったり、暴飲暴食によってプリン体が増えており、結果的にその燃えカスである尿酸が過剰に産生されいる状態です。この状態が続くと尿酸プールの限界容量を超えてしまい、血液中の尿酸値がどんどん上がっていきます。排せつ低下型に次いで多く、約10%が産生過剰タイプです。 - 排せつ低下型
プリン体の量は増えていないが、体外への尿酸排せつ能が落ちている状態です。この状態でも続くと尿酸プールがあふれ、尿酸値は上がります。最も多いのがこのタイプで、全体の約60%が排せつ低下型です。 - 混合型
産生過剰タイプと排せつ低下型が混ざったタイプで全体の約25%が混合型と言われています。
痛風の診断予測
他には、下記のように7つの質問をスコア化し、より簡易的に痛風かどうかを予測する方法もあります。
評価項目 | スコア |
---|---|
男性である | 2.0 |
以前に関節炎の急性発作を起こしたことがある | 2.0 |
1日以内の発症 | 0.5 |
関節の発赤 | 1.0 |
中足趾関節*を含む病変 | 2.5 |
高血圧など1つ以上の心血管疾患**がある | 1.5 |
血清尿酸値 ≧ 5.88 mg/dl | 3.5 |
中足趾関節*:足の指の付け根にある関節のこと
心血管疾患**:狭心症、心筋梗塞、心不全、脳卒中、一過性脳虚血、末梢性血管疾患
当てはまる項目のスコアをすべて足した値によって痛風かどうかをある程度予測できます
4.0以下 | 痛風とは言い切れません |
4.5~7.5 | 痛風かもしれません |
8.0以上 | 痛風の可能性が高いです |
ただし、似たような病気もあるので最終判断は医師にまかせてください。
痛風と間違えられやすい疾患
痛風と思い受診したところ、検査の結果痛風では無く他の病気だと分かることも少なくはありません。
下記に実際の臨床の現場で見受けられる、痛風と間違えられやすい疾患は以下の通りです。
- 外反母趾
- 爪周囲炎
- 毛嚢炎
- 蜂窩織炎
- 変形性関節症
- 関節リウマチ
- 偽痛風
- 神経の異常(糖尿病、腰椎の異常など)
- 足底筋膜炎
- 扁平足
- 疲労骨折
- 骨折・靱帯損傷
区別は一般の方には難しい場合もあるため、インターネットなどで調べて間違った判断をしないよう気をつけましょう。気になる症状がある場合は必ず医師に相談してください。