認知症について

認知症とは?

認知症は老化によるもの忘れ違い、何かの病気によって起こる症状や状態の総称で、正確には病名ではありません

認知症では、何かの病気によって 脳の神経細胞が壊れるために起こる状態をいいます。そして認知症が進行すると、だんだんと理解する力や判断する力がなくなって、社会生活や日常生活に支障が出てくるようになります。

 

治療で治る可能性のある認知症

認知症全体では、約15%と少ないですが、以下のように各疾患の治療を行うことで認知症の症状を治癒できる可能性があります。問診や画像検査などで区別は可能です。

正常圧水頭症 脳腫瘍 慢性硬膜下血腫
栄養障害 甲状腺機能低下症 薬物
 アルコール

 

三大認知症

認知症のうち、およそ半数はアルツハイマー型認知症です。次に多いのがレビー小体型認知症、そして血管性認知症と続きます。これらは「三大認知症」といわれ、全体の約85%を占めています。

►三大認知症のそれぞれの特徴

アルツハイマー型認知症 レビー小体型認知症 血管性認知症
原因 老人斑や神経原線維変化が、海馬を中心に脳の広範に出現する。脳の神経細胞が死滅していく レビー小体という特殊なものができることで、神経細胞が死滅してしまう 脳梗塞、脳出血などが原因で、脳の血液循環が悪くなり、脳の一部が壊死してし まう
画像でわかる脳の変化 海馬を中心に脳の萎縮がみられる はっきりした脳の萎縮はみられないことが多い 脳が壊死したところが確認できる
男女比 女性に多い 男性がやや多い 男性に多い
初期症状 もの忘れ 幻覚、妄想、うつ状態、パーキンソン症状 もの忘れ
特徴 認知機能障害 (もの忘れ等)
もの盗られ妄想、徘徊
取り繕いなど
認知機能障害 (注意力・視覚等)
幻視・妄想 うつ状態
パーキンソン症状 睡眠時の異常言動 自律神経症状など
認知機能障害 (まだら認知症)
手足のしびれ・麻痺・感情のコント□—ルがうまくいかないなど
経過 記憶障害からはじまり広範な障害へ徐々に進行する 調子の良い時と悪い時をくりかえしながら進行する。ときに急速に進行することもある 原因となる疾患によって異なるが、比較的急に発症し、段階的に進行していくことが多い

 

 

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症とは?

もの忘れの進行から発覚することが多く、普段できていたことが少しずつできなくなっていきます。新しいことが記憶できない、最近のことが思い出せない、時間や場所がわからなくなる、などが特徴的です。また、物盗られ妄想や徘徊などの症状が出ることがあります。

 

原因

β(ベータ)タンパクやタウタンパクという異常なタンパク質が脳にたまって神経細胞が死んでしまい、脳が萎縮して(縮んで)しまいます。記憶をつかさどる海馬という部分から萎縮が始まり、徐々に脳全体に広がりますが、年単位でゆるやかに進行していきます。

 

主な症状

○ 認知機能障害

新しく経験したことを記憶できず、すぐに忘れます。食事をしたこと自体を忘れてしまうのはそのためです。また、日付、昼か夜か、今いる場所、家族の顔などがわからなくなることもあります。さらに判断する力や理解する力が落ちて、食事を作ったり、おつりを計算することができなくなったりします。

○ BPSD (行動・心理症状)

経過中に無為・無関心、妄想、徘徊、抑うつ、興奮や暴力などの症状が現れることがあります。

○ 身体面の症状

脳の萎縮が進行するまで目立ちません。また、表面上“取り繕う”のが上手なのがアルツハイマー型認知症の特徴でもあり、早期発見が遅れる原因ともなります。

 

ご家族の対応のポイント

本人はすぐに忘れてしまうので何度も同じ質問や行動を繰り返し、ご家族や介護する方はイライラしてしまうことが多いようです。「財布を盗られた」という妄想も、本人にとっては現実。盗んでいないと反論しても通じません。
◎否定しないで、本人の話をじっくり聞きましょう
◎同じことを言われても、初めてのつもりで話を合わせる。
◎食事後に「まだ食べていない」と言われた時には「食べたでしよう」ではなく、「これから食べましようね」というふうに接する。

 

治療

アルツハイマー型認知症では記憶と関連の深いアセチルコリン作動性神経の障害がみられます。そこで,アセチルコリンの分解酵素を阻害してアセチルコリンを相対的に増加させ、記憶の改善効果を期待する薬剤(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬)が広く用いられています。現在,国内でアルツハイマー型認知症に対して承認されている薬剤は塩酸ドネペジル(アリセプト®)、ガランタミン(レミニール®)、リバスチグミン(リバスタッチ®;貼り薬)の3種類の薬剤です。
また、神経伝達に関与するグルタミン酸の受容体の一つ(NMDA受容体)に結合することによってグルタミン酸の異常な流入を抑え学習・記憶を改善させるメマンチン(メマリー®)も使用されています。

 

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症とは?

実際にはいない人が見える「幻視」、眠っている間に怒鳴ったり、 奇声をあげたりする異常言動などの症状が目立ちます。また、手足が震える、小刻みに歩くなどパーキンソン症状がみられることもあります。頭がはっきりしたり、ボーとしたり、日によって変動することも特徴的です。

 

原因

脳の神経細胞の中に「レビー小体」と 呼ばれる異常なたんぱく質の塊がみられます。このレビー小体が大脳に広くに現れると、その結果、認知症になります。

 

主な症状

○ 認知機能障害

注意力がなくなる、ものがゆがんで見えるなどの症状が現れます。レビー小体型認知症では、最初は記憶障害が目立たない場合もあります。

○ 認知機能の変動

時間帯や日によって、頭がはっきりしていて物事をよく理解したり判断したりできる状態と、ボーとして極端に理解する力や判断する力が低下している状態が入れ替わり起こります。

○ BPSD (行動・心理症状)

・幻視
実際には見えないものが見える症状です。見えるものの多くは小動物や人で「何かが壁を這い回っている」「誰かが部屋に座っている」などと、具体的です。また、人形を女の子と見間違ったり、丸めてある洋服を動物と見間違うなどの「錯視」もよくみられます。

・睡眠時の異常言動
眠っている間に大声で叫んだり、怒鳴ったり、奇声をあげたり、暴れたりすることがあります。

・抑うつ症状
気分が沈み、悲しくなり、意欲が低下する症状です。抑うつ症状は、レビー小体型認知症の人の約5割にみられるともいわれます。

 

身体面の症状

○ パーキンソン症状

動作が遅くなったり、無表情、筋肉のこわばり、前かがみで小刻みで歩く、倒れやすいなどの症状が現れます。

○ 自律神経症状

血圧や体温、内臓の働きを調整する自律神経がうまく働かず、身体的にさまざまな不調をきたします。立ちくらみ、便秘、異常な発汗・寝汗、頻尿、だるさなどがあります。場合によっては、めまいを起こして倒れたり、気を失う危険もあります。

 

わかリにくい「レビー小体型認知症」

レビー小体型認知症は、患者さんによって症状の現れ方が異なります。また、 時間帯や日によって症状が変動するので、正しく診断しにくい病気です。 そのため、初めにパーキンソン症状が現れて「パーキンソン病」と診断された後に、記憶障害が出てきてレビー小体型認知症とわかったり、逆にもの忘れでアルツハイマー型認知症だと思われた後にパーキンソン症状が現れて レビー小体型認知症と診断されるケースもあります。その他にも高齢者の場合には、うつ病と診断された後、徐々にレビー小体型認知症の症状が現れることがあります。

 

ご家族の対応のポイント

◎転倒に注意しましょう
パーキンソン症状で筋肉や関節がこわばり、歩行が小刻みになるため、つまずいたり、転びやすくなります。また、立ち上がった際にふらつきや、めまいを起こして倒れたり、気を失ったりすることがあります。イスからの立ち上がりや階段では手すりを使う。 つまずきやすいものは片付け、家の中を整える。

◎食べ物や飲み物が飲み込みにくくなります
進行すると飲み込む機能が衰えて、唾液や食べ物が気管に入ってしまうことがあります(誤嚥)。むせて吐き出せるとよいのですが、吐き出せないと誤嚥性肺炎を引き起こし致命的になることも。食事の時家族が見守り、細かく刻む、卜□ミをつけるなど、調理を工夫するとことが大事です。

 

血管性認知症

血管性認知症とは

脳梗塞や脳出血などによって発症する認知症です。脳の場所や障害の程度によって、症状が異なります。そのため、できることとできないことが比較的はっきりとわかれていることが多いです。手足の麻痺などの神経症状が起きることもあります。

 

原因

脳の血管が詰まる「脳梗塞」や血管が破れる「脳出血」など脳血管に障害が起きると、その周りの神経細胞がダメージを受けます。脳の画像を見ると、障害の跡がわかります。
脳出血や脳梗塞の後、急激に発症し、その後も脳出血や脳梗塞にともない症状が階段状に進行していきます。

 

主な症状

○ 認知機能障害

障害される能力と残っている能力があります(まだら認知症)。判断力や記憶は比較的保たれています。「せん妄」が起きて突然認知機能が悪化することがあります。

○ BPSD (行動・心理症状)

意欲や自発性がなくなったり落ち込んだりすることがあります。感情の起伏が激しくなり、些細なきっかけで泣いたり興奮することがあります(感情失禁)。

○ 身体面の症状

脳血管障害によって、手足に麻痺や感覚の障害など神経症状が現れることがあります。ダメージを受けた場所によっては言語障害などが出る場合もあります。

 

ご家族の対応のポイント

◎規則正しい生活習慣を
意欲がなくなって、日中の活動が少なくなると、不眠や昼夜逆転の原因になります。今までの規則正しい生活習慣をできるだけ崩さないように、日課表などを作って無理のないものから徐々に活動を増やしていきましょう。
デイサービスやリハビリテーションの利用も有用です。

 

 

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