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スポーツ貧血
スポーツ貧血とは?
主な症状は、運動中の息切れや動悸、疲れやすい、慢性的なだるさ、などで、以前と比べバテやすくなったり、記録が伸びないなどのパフォーマンス低下を引き起こします。
もともとアスリートは普段の激しいトレーニングによって、汗などから鉄の排出量が増え、酸素を運ぶヘモグロビンを作るために鉄の消費が増えるため、鉄が足りなくなり「鉄欠乏性貧血」をおこしやすいといえます。このため、一般人より食事の量と質に普段から気をつけていないと鉄不足になりやすいので、注意が必要です。
スポーツ貧血は、スポーツ内科の中で最も多い問題です。
貧血とは?
貧血とは、体内のヘモグロビンが基準値よりも少ない状態をいいます。
ヘモグロビンとは、赤血球の中にあり、身体のすみずみまで酸素を運ぶ役割を果たしており、鉄とタンパク質から作られます。
したがって、何らかの原因によって体内の鉄が不足すると、ヘモグロビンの量が減り、いわゆる「鉄欠乏性貧血」となります。
医学的には、鉄欠乏性貧血や自己免疫性貧血、悪性貧血など様々な種類の貧血がありますが、スポーツが原因で生じる貧血は、鉄欠乏性貧血が殆どです。
貧血になると、体中に酸素が十分に送られなくなり、身体が酸欠の状態になってしまうため、動悸や息切れ、疲れ・だるさなどの症状がみられるようになります。
一般人の貧血とスポーツ貧血の違い
スポーツをしない方の、一般的な貧血とスポーツ貧血の間には違いがあります。
まず、貧血の診断となる検査数値の基準が異なります。
アスリートは一般人に比べ酸素需要が高いため、一般人の貧血の診断基準よりは高めの基準が必要です。
ヘモグロビン(g/dl) | フェリチン(ng/ml) | |
一般人の貧血 | 男:13以上 女:12以上 | 12以上 |
スポーツ貧血 | 男:14~15以上 女:13~14以上 | 男:40~50以上 女:30~40以上 |
したがって、学校や会社の健康診断で正常と判断されても、アスリートとしては貧血な状態、ということもあり得ます。
また、治療についても鉄剤を使用する点では同じですが、それだけでは一時的に回復したとしても、いずれ再発してしまいます。
スポーツ貧血はカロリー不足(正確には、有効エネルギーの不足)が原因となっていることが多く、鉄分の摂取量のほか、摂取カロリーの見直し等食事の改善も必要となります。
スポーツ貧血の原因
スポーツ貧血の原因は下記のように様々です。
(1)鉄の不足
①鉄の需要が増加
・成長やトレーニングによって筋肉量が増加
・運動量が増加
②鉄の摂取不足、吸収低下
・食事で十分な鉄分が摂取できていない
・腸での鉄吸収低下(ピロリ菌感染やヘプシジンの影響、など)
③鉄が失われる
・月経(女性)
・汗
・消化管からの出血や血尿など
(2)溶血
・足底部(足の裏)への繰り返す衝撃による赤血球が破壊される
⇒特に中長距離の陸上選手やサッカー・バレーボール・バスケットボール・剣道などの選手に多いです
・筋肉の強い収縮による血管内溶血
(3)その他
・エネルギー不足(中長距離ランナー、柔道やレスリングなど体重別競技で厳しい減量を行う選手など)
・希釈性貧血
・慢性疲労・ストレスによる骨髄機能低下
・慢性炎症
このようにスポーツ貧血にも様々な原因があり、スポーツ内科に精通した医師の診療のもとで、原因にあった最適な治療を行うべきです。
スポーツ貧血の検査
スポーツ貧血の診断のために必要な検査は血液検査となります。
主に、ヘモグロビン(Hb)、鉄(Fe)、フェリチンを測定し、場合に応じて網状赤血球数や総鉄結合能(TIBC)などを追加します。この中で大事なのがフェリチンで、貯蔵鉄の量を反映しています。
鉄分は体内で作ることはできなくて、全てが食事から得られます。こうして吸収された鉄分はヘモグロビンの合成に使用されますが、余った鉄分はフェリチンという形で体内で貯蔵しておきます。そして、何らかの原因で体内の鉄分が不足すると、蓄えていたフェリチンから鉄分を補うようになります。したがって、貧血になる過程では、まず貯蔵鉄であるフェリチンの値が減少します。
その次に鉄(Fe)が下がり、そして歳出駅にヘモグロビン(Hb)の順番で数値が低下します。
アスリートは、1年に3~4回の血液検査を受け、自分自身のヘモグロビン、鉄、フェリチンの値を常に把握しておくとよいでしょう。また、変化を知るために、同じ医療機関で続けて検査することも大事です。
スポーツ貧血の治療
ポーツ貧血と診断された場合は、鉄剤の内服(飲み薬)と同時に栄養指導を行います。
(鉄剤の注射薬もありますが、直接血管の中に入り過剰投与の危険性があるため、使用することはほぼありません。何らかの原因で腸からの鉄吸収が阻害(うまくいかない)されている場合など特殊な場面に限られます。)
治療中は随時血液検査をし、フェリチン値をみながらお薬の調整を行います。ヘモグロビン値や鉄の値が回復しても、貯蔵鉄であるフェリチンが低値のままだと再び貧血になる可能性が高いためです。
鉄剤を内服中は、便が黒くなりますが、これは酸化された鉄が便中に混じって出てくるためで異常ではありません。
副作用としては、下痢などの消化器症状が多いですが、一般的な錠剤からシロップ剤へ変更することによって、副作用が改善することがありますので、治療を継続することが可能です。
栄養指導は、まずアプリを使用してしばらく普段の食事内容を細かく記録していただくことから始めます。次に、現状の把握・分析を行い、競技の運動負荷に応じた食事バランスを考えていきます。正しい食事はスポーツ貧血の治療だけではなく、その後の予防にも欠かせません。